漫画のできるまで その22012/10/28


■ネーム

プロットに編集さんからのOKが出ると、次はネーム作業に入ります。
ネームとは、コマを割って、セリフも入った漫画の元のようなものです。漫画家さんによって、それぞれ描き方も、入れる絵の密度も違います。

・一稿

私はセリフの書き出しからはじめます。
B4の大きさの、使用済みのコピー用紙の裏に、ダーッと書き込んでいきます。このときは消しゴムも使わず、文字も自分が読めればいいというくらいに書き飛ばしていきます。自分でも、ときどき書いた文字が判別不明なことも(笑)。



セリフだけではわからない、人物の表情や、擬音、表情なども、ト書きのように書き込みます。
キャラクターの表情や、背景のかんたんなレイアウトも描き入れることもあります。

これが第一稿となり、だいたいのページ配分を把握します。
ページが足りなければ、詰めたり、カットしたりする場所を決め、ページに余裕があるようなら、見せ場のシーンを大きく取るようにします。

・二稿

次に同じ大きさの紙に、今度はきれいな字で、ページ割を考えながら、セリフ等のブラッシュアップをしていきます。
だいたいこの段階で、規定のページ数におさめます。
ひとつの文字のかたまりが、ひとつの吹き出しに入る文字になります。
この方法だと、セリフが多すぎる場合一目でわかるので、ページあたりの文字数があまり多い場合は、一稿のときのページ割を変えていきます。
これが二稿となります。



・三稿

このあと、きちんとしたコマ割のあるネームに入ります。
「人妻編」の大半は、「ComicStudio」という、パソコン用の漫画制作ソフトを使っていました。
このソフトを使うと、セリフをコピー&ペーストできるので、コマ割や、文字の配置を変えるとき、セリフの書き直しをしないですむので、手の負担が減るんですね。
なにしろ、主人公の名前からして、文字の画数がハンパないので……。

PCの作業画面は、こんな感じです。
これは「人妻編」コミックス10巻、168、169ページのもの。

ComicStudioは古いPCに入っているので、ネームのときはそちらで作業していました。なのでPC画面の背景が、カラーのときのものと微妙に違っています。



ComicStudioには、ネーム用のレイヤー(レイヤーの解説については こちら をごらんください)もありますが、私はふつうのレイヤーを、「ワク線」「人物」「ふきだし」の3つに分けて使っていました。
(セリフは自動的に別のレイヤーになります)
大きさはB5サイズです。
印刷することを前提に描いていますが、セリフが読めて、だいたいの人物配置や表情などがわかればいいので、解像度は300dpiで。
ComicStudioでは、見開きでネームを描いています。
こんなふうに、ページごとの管理ができます。



ただ、PCトラブルのときなどは、今までのように、手書きのネームを書いていました。
手書きのネームの場合は、直接原稿用紙に描き込みます。別紙に書くと、あとで原稿用紙にネームを書き写すときに、手に負担がかかるので、それをふせぐためと、時間短縮のためでもあります。

下は「人妻編」最終回、コミックス11巻、78、79ページの部分です。手書きだと、こんな感じになります。
これはB4の原稿用紙にえんぴつで書いたものを、ファクスで送るために、B5サイズに縮小コピーしたものです。
最終回は、PCの関係でComicStudioが使えず、手書きのネームになりました。これが三稿目になります。



上記のネームの部分を、上ににアップした、一稿、二稿の該当部分と比べると、こんな感じです。
ページの割り振りや、演出の仕方等、変わっていくのがおわかりいただけると思います。



「コミックスタジオ」で書いたネームは、プリントアウトをして、アナログで書いたネームは、コピー機で縮小して、ファクスで編集部に送ります。
そのあと編集さんのチェックを経て、作画に入ります。

編集さんは、お話の流れがおかしくないか、矛盾がないか、表現におかしいところはないか、誤字、脱字などをチェックしてくれます。また単語の説明など、自分でもしておくのですが、他にもしたほうがよい場所などを指摘してくれます。

直す場所が多い時は、もう一度ネームの書き直しなどになりますが、言葉の置き換えや、表現方法を変える、演出法を変える、などの場合は、変えた箇所のみ送り直して、確認してもらいます。
最近はありがたいことに、大きな直しはないです。
大きな直しが入ると、ページ割から変えなければならなくなり、ページの左右が逆になって、ページをめくる前の「引き」の効果が使えなくなったり、大きなコマをとろうと思っていたところで、取れなくなったりするので、調整が大変になります。
私の場合、原作があるので、エピソードを丸まる変えたり、削ったりするような直しがないので、まだマシなのですが。

編集さんのチェック内容に、納得がいかない場合は話し合います。
それはこういう解釈をしたので、こう書きましたと、説明してわかってもらうこともあり、編集さんに指摘されて、私のほうが、ああ、そうだった、そうですねと納得したり。
書きたいことが読者にきちんと伝わるように、編集さんと打ち合わせをします。

「なんて素敵にジャパネスク」のときに、セリフの言い回しがおかしいと編集さんから指摘があり、
「では、こうしては」
「いやいや、このほうが……」などと、電話口で話していて、
「じゃあ、この言い回しで行きましょう」となったのですが、
「原作の意味から離れているといけないので」と、原作の箇所を確認したところ、直したセリフは、原作まんまのセリフになっていました(ガクリ)。そのまま書けばよかった。

小説では、セリフが多くてもあまり問題はないのですが、漫画にすると吹き出しだらけになって、読み辛くなってしまうことがあります。シーンによっては、それが気にならない場合もあるのですが、コメディーではお話のテンポが悪くなることもあり、なるべくセリフは削るようにしていました。そんなことで起きた、マヌケなお話でした(笑)。

一方、「月の輝く夜に」は、コミックスにも書きましたが、原作のセリフを、なるべく削らないようにしました。コメディではないということもありますが、このお話の世界を描くには、セリフを削ったり、変えたりしないほうがよいと考えたからです。

そんなワケで、ネームがいちばんアタマを使う作業です。


続きます。

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